俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
「……ま。というわけだからさー、とっとと菜子ちゃんと想いを通じ合わせて、そんでセックスして、『これだから童貞は』って言われないようになれ」
「だからっ! 朝のことを蒸し返すんじゃねぇって!」
だぁーもうっ、せっかく顔色が落ち着いてきた頃だったのに。俺、きっとまた真っ赤だ。
急にいつもの軽くてふざけた智樹に戻った。ホントに人のことを振り回してくれるよな、コイツは。
「はははっ。おもしれー。菜子ちゃんもピュアだけど、お前も大概だぞ? このやろー」
「うぐっ! 苦しいってっ……おいっ」
智樹が楽しげに左腕で俺の首に抱きついて、ヘッドロックを仕掛けてくる。俺がそれから逃れようとジタバタしてもがいていると、前を通りかかった腕組みしているカップルに横目でチラッと見られた。
「やっだぁー。私達よりもイチャイチャしてるぅー」
「リアルイケメンBL、マジパネェーな」
うげ。俺達、イチャイチャしてるって言われて笑われてるぞっ……ていうか、
「智樹。BLって……何だ?」
「……ぷははっ! お前知らねぇの?
BLってのは『ボーイズ ラブ』の略称だぞ」
「あーなるほど。そういうことかー……って!
うわ、冗談じゃねぇっ。早く離せって!」
「いいじゃなぁーい。本当のことなんだしぃー。んー」
「やめろっ! 唇を突き出して甘えてくんなっ! 更なる誤解を生むっ!」
あーほらっ。あのカップルだけでなく、周りにいる人全員からも奇異の目で見られてるしっ……
ん? まてよ?
俺、智樹の好きな人って、当たり前に『異性』って思っちゃってるけど……
今のコイツのふざけた振る舞いを見てたら『まさか』と思ってしまい、確認せずにはいられなくなった。