俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
「なぁ、智樹? 一つだけ……訊いても、いいか?」
「んー? 何だ?」
「お前のいう、『好きな人』……ってさ……」
「うん……」
「ど…………『同性』だったり……するのか?」
「………………」
長めの沈黙のあと、智樹は「ぶーーっ!」と体内にある酸素を全部使い果たしそうな勢いで吹いた。は? 何で?
「だはははっ! すんげー強張った顔してっから、どんだけ怖い質問なのかと思ったら……まさかのそれかよっ。あーあ、変に緊張して損したぁ」
男前の塩顔が崩れるぐらいバカ笑いしてきやがる。ベンチをバンバン叩いたり、足をバタバタさせたりして、スゲー苦しそうにもがいてる。
「ちょっと待て、そんなにバカ笑いする程バカな質問だったか!? 俺はなぁ、真剣だったんだぞっ!?」
「だってさー……はぁー苦しー……もうダメだ。このままだとオレ、シックスパックになりそ……はははっ」
なんか知らないけど、完全にバカにされていることは確かだ。心臓をバクバクさせながら怖々と質問をした自分が、何だか恥ずかしくなってきた。
「ーーーーっ、もういいっ。お前のことなんか、一生聞いてやんねーよっ!」
「俊光ー拗ねんなってー。好きな人はな、異性だよ、異性。
けどな、同性だったら間違いなくお前だよ。マジで」
げっ。また「んー」と唇を突き出してきたっ。つかさず智樹の顔を掴んで横に反らした。
「俺は同性が好きだとしても、お前みたいな意地わりーヤツなんか絶対好きにならねーからっ!」
これもマジになって言い返したら、智樹はますます腹をよじらせる。
もう嫌だ。今はこれ以上コイツと一緒にいたくねぇ。
おい、電車! 早く来いよっ!