俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
「……はぁ。しゃーないなぁー。こうなったらワタシが菜子をもらっちゃうぞーっ」
「キャーッ」
明里に真正面からギューッとされちゃった。華奢な身体なのに、私を巻く腕の力は、息が「うっ」てつまっちゃうくらい強い。
「あ……明里?」
そして、強く抱きついたまま動かなくなっちゃった。
「……菜子」
「ん?」
「ワタシの前では、無理しないでよ?」
「えっ?」
「菜子がどんだけ俊光さんを好きだったかワタシはよく知ってるし、諦めなきゃいけないことがどんだけ辛いかもわかってる。だから、泣きたくなったら泣いていいんだからね? ワタシの小さい胸で良ければ、いつでも貸すし」
「……っ、あ……明里ぃー……」
あーんダメぇー……涙が漏れてきちゃったぁ……。
私も背中に手を回してギューっとした。明里の温かさがより伝わってきて、辛いと言い当てられた気持ちにまでポカポカと温もると……もうとめられないよー。
「もーう。だからってすぐ泣くぅー?」
「だって嬉しいんだもん。早速この小さい胸、借りるね」
「ちょっと、遠慮ないなぁ。『小さい胸だなんて、そんなことないよ』ぐらい言ってよー」
「無理だよぉ、本当に小さいもん……あ。でも明里、うちのお母さんよりかは大きいよ?」
「そこでワタシ喜んだりしたら、菜子のお母さんにかなり失礼よね?」
涙を溢しながらも、明里と抱き合ったままクスクスと笑い合った。
ありがとう明里……。本当、いてくれるだけでも心強いよ。