俊光と菜子のホントの関係
第12章 それから――
*
自分が担当するコーナーまでカートを押し、返却された本を棚に戻していく。
壁にかかっている時計を見てみると、やっと夜の八時を回ったところだった。一時間増えただけなのに、やたら長く感じる。
シフトが変わってまだ数日だし、慣れるまで違和感は拭えないだろうな。
「池崎君」
「……あ、山本先輩」
声がした方へ振り返ると、最近図書館のバイトに入ってきた女の人が、にこやかな表情で立っていた。
俺の教育係をしている佐原(さはら)先輩と同じ学年で同じ学科の先輩だ。
少し茶色がかったフワリとした長い髪を一つにまとめて、化粧もわりとしっかりめにしている。二つしか違わないのに、大人の女性のような落ち着いた雰囲気が漂ってくる。
「ワタシの方、戻し終わったから手伝おうか?」
「いいですか? ありがとうございます」
戻す本が多いから助かる。
俺は素直にお言葉に甘えて、山本先輩と並んで本を戻し始めた。