俊光と菜子のホントの関係
第14章 『俊光君への兄(本命)チョコ』
「……菜子、どうする?」
「明里」
明里がみんなに聞こえないように耳打ちをしてきた。
「無理して参加することないんだからね?」
唯一私の気持ちを知る明里は、優しく気を使ってくれた。
私は……俊光君が好き。
でも……俊光君はお兄ちゃんだから。
「私……行ってみようかなぁ?」
「菜子っ、いいの? 合コンなんだよ?」
「うん。告白は、受けられなくて断っちゃったけど……合コンは会って話したりするだけで、いきなりつき合うとかするワケじゃないでしょう? だからこういう機会で、もっと他の男の人にも目を向けてみようかなぁと思って。
晃君の友達だし、明里達もいて心強いから、一歩踏み出しやすいしね」
なんて、誤魔化したくて言い訳しているみたいだけど……。
「まぁ……あんたがそういうならいいんだけど……」
それでも明里は何も言わず、私の気持ちを汲んでくれた。
「ありがとね、明里。みんなで楽しもうね!」
最後に「えへへー」と明るく笑ってみせてから、明里の腕に抱きつくみたいに絡みついた。
……そうだよね。こうしていけば、俊光君のこと……普通のお兄ちゃんとして見れるようになれるよね?
俊光君に対して、ムズムズウズウズとかもしなくなるよね?
いつまでも『俊光君俊光君』じゃダメなんだよ。少しずつでも気持ちを離していかなきゃ。
来年のバレンタインには、『(本命)』が付かない、普通の兄チョコをあげるんだから……ね。
言い聞かす度にズキズキと痛む胸を抑え込むように、明里の腕を更にギュッとした。