俊光と菜子のホントの関係
第15章 『兄チョコに隠されていた想いに……』
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講義には始まる寸前で駆け込んでギリギリ間に合った。
だだっ広い大講義室で、中年の准教授がマイクを通して、講義を淡々と進めている。
だけど……ちっとも頭に入らねぇ。ノートを取るので精一杯だ。
「はぁーーーー……」
講義中にも関わらず、内に溜めておききれない悶々を、ため息にして腹の底から深く吐く。と、右隣の智樹が男前の塩顔を苦(にが)そうにしかめ、『またか』と言いたげにしているのがわかった。
「俊光ー。頼むからさ、講義中ぐらいは一旦忘れて集中してくれ。さっきからため息がうるせーよ」
潜めた声で注意を促されても俺は、
「悪い。わかってるし、出来れば俺も集中したいんだ。だけどな、あんなのどうしたら忘れられるってんだよ。はぁーーーー……」
ため息をやめられなかった。
「……いくら言ってもダメだな、これは」
智樹はやれやれと首を振ってから、俺からまた准教授の方へと向き直した。