俊光と菜子のホントの関係
第15章 『兄チョコに隠されていた想いに……』
まさか菜子が……可愛い髪型をして、あげたヘアゴムまでつけて、俺にバレンタインチョコを渡してくるなんて……。そんなこと、思ってもなかった。だから、
正直……気持ちをぐっと持ち上げられてしまった。
そうでなくても、アイツはどんどん女らしくなってきてるってのに。それは、髪が伸びてきたせいもあるかもしれないけど。
この前の時もそう。洗面所で、伸びた髪を緩くふわふわに巻いた菜子とバッタリ会ったら、不意にドキッとさせられたんだ。
なのに、アイツは……俺の疚しい心境を知らないで相変わらず無邪気に嬉しそうに、
(――どうしても私が一番に、俊光君にチョコを渡したかったから……)
無自覚で可愛いことを言ったり、
(俊光君っ……!)
程よく肉付きが良くて、柔らかく弾力のある体(と……胸)で俺に抱きついたり、
(俊光君のことが――大好きなのっ……!)
挙げ句に……『大好き』ときた。
っ、んだぁーーーーっ!!
急激に堪らなくなり、四人用の長い机にうっぷして悶えた。俺と同じ机を使用している智樹は困り果て、他の二人も迷惑そうに視線を刺してくる。
「……はぁーーーー……」
このため息も、電車に乗ってからずーっと吐き続けている。もうどれほどの幸せを逃がしているのかわからない。