俊光と菜子のホントの関係
第15章 『兄チョコに隠されていた想いに……』
午後の講義からは、ため息はピタリと治まったけど……
今度は、引っかかった感覚がずっと拭えなかった。
結局俺は午前同様、菜子のことでいっぱいになり、午後の講義も全く頭に入っていかず、ノートを取っただけで終わってしまった。
最後の講義が行われていた教室を出て、廊下を智樹と並んで歩く。
まだ菜子のことでぼんやりと想い耽っていると、
「俊光はこれからバイトなんだよな。やっぱ今日も最後までか?」
智樹は、チョコでパンパンの紙袋を、重たそうに「よいしょ」と肩にかけ直しながら訊いてきた。
「あ、いや……それが今日は事務職員で、本を管理しているコンピューターの処理をするから、図書館が八時で閉館なんだ。明日から蔵書点検に入るから、その関係で……」
「じゃあ、今日は少しだけ早く帰れるんだなー」
「あぁ……だな」
蔵書点検は、年に一回行う本の棚卸し。図書館内の全ての本をくまなく点検するのに、一週間の期間を要するらしい。その間、図書館はずっと休館となる。
とはいえ、蔵書点検はバイトも含めたスタッフ総出で作業をしていくから、仕事自体は休みになったりはしない。作業時間も、朝の九時から夜の九時までと、平日の図書館の開館時間と一緒。今度の土日もその時間でやる予定。だから、早く帰れるのは今日だけ。
少し早く帰れるけど……
菜子は今日、何時に帰ってくるんだろ。
また明里ちゃん達と、遅くまで遊んだり泊まったりするのか? それとも、普通に早く帰ってきたりするのか?
早く会いたいような、ちょっと避けたいような……複雑だ。