俊光と菜子のホントの関係
第15章 『兄チョコに隠されていた想いに……』
「あ……あのさっ、相手はこれを本命チョコだって知った上で買うもんなのか? 知らないで買ったとかは……?」
その可能性もある。十分にある。沸騰するな血。落ち着け心臓。先走るな自意識過剰。
けど――
「いやーそれはないだろー。絶対本命チョコだって知った上で買ってるに決まってんじゃん。
商品のポップにも思いっきりアピッてたんだぞ。『今年のイチオシ本命チョコ』……ってな」
祐太は、その可能性をも消した。
目の前がクラクラする。心拍数だけじゃなく、目眩まで治まらなくなった。
「そんな……」
「何。まさか俊光、知らないで貰ったの? おいおいマジかよ。知らなくてもさー、どう見たってそれ本命でしょ。中身は『ラブ』を象徴する赤いハートしか入ってないんだからさ、気づいてやれよ。
俊光ってホーント、鈍・感」
「…………っ」
祐太はチクチクと心を刺すように言ってきただけでなく、最後の言葉に合わせ、胸の中心を人差し指でチクチクと刺すように突っついてきた。
けど俺は、その祐太に上手い返しなんて出来るわけもなく、突きつけられた事実に、ただドキドキクラクラさせられるばかりだった。
……ただの兄チョコじゃなかった。
(だってそれ、本――
あーとっ、本…………物の、チョコレートだからっ)
振り返ってみて今わかった。本物のチョコと言ったのは、気持ちを隠すための誤魔化しだったと。
いつになく可愛いヘアアレンジをして、俺があげたヘアゴムまでつけたのも、
『大好き』って言って、ぎゅっと強く抱きついてきたのも、
本当は――俺のことが、好きだから……。
(かけがえのない……大好きなお兄ちゃんだから)
菜子のホントの気持ちに気づけば気づくほど、
胸がつまって、すごく息苦しくて、
もう……いっぱいいっぱいだった。