俊光と菜子のホントの関係
第16章 『迫ってくる、もう一つの本命チョコ』
*
私はバタバタして電車に駆け込むと、はぁはぁ息を切らしながら扉の側に立った。
ここから三駅目かぁ。図書館のバイトが始まる前までに間に合えばいいんだけど……。
流れ始める外の景色を眺めながら、扉のガラス越しにうっすらと映る自分をよく見てみる。
俊光君に会いに行くことになるんだったら、髪をほどかなきゃよかったよぉ……。
朝がんばって完成させたヘアアレンジは、明里に見せた後、すぐに崩しちゃったんだ。
明里には『合コンでもそのアレンジで参加したら、絶対好感度がアップするのにー』と言われたけど、
あのヘアアレンジは……俊光君のためだけにしたものだから。
だから今は普通に下ろしてるだけ。巻いた髪までは取れなかったから、うまい具合にゆるふわセミロングヘアにはなってるけど。
俊光君……。
(俺も…………
菜子のことが――大好きだよ……)
「っ!」
ひゃーっ! 熱い熱い熱いぃーっ!
カッカと燃えている顔を、手でパタパタと扇いで冷ました。
「……はぁー」
ある程度冷ました頬を更に冷ますように、寒さで冷えた両手でそっと覆う。ひんやりとして気持ちよくて、自然と「ほう……」とため息が出ちゃった。
そういえば……俊光君から『大好き』って言われたの、初めてだった。
妹として言ってくれただけかと思ってた。
なのに――
(それは……大事な妹としても、だけど……
それだけじゃなくてっ……
俺は、お前のことを……
ひ……
一人の女の子として、す――)
……っ、もうっ、俊光君のバカッ。肝心なところで電話を切らしちゃうなんて。
切れたあとに何回かけ直しても『お客様のおかけになった電話は~』て言われるだけだし。私はアナウンスの人と話したいんじゃないんだよぉ!
早く会いたい。会って、電話の続きが聞きたい。
聞いて……私もちゃんと言いたいよ。
『お兄ちゃんとしても、一人の男の人としても、俊光君のことが好きだよ』って。
俊光君と同じ気持ちなら、兄妹でもいい。好きでいたい。
「俊光君っ……」
胸がギュッと締め付けられると、手すりにもすがるようにぎゅっ……と握った。