俊光と菜子のホントの関係
第16章 『迫ってくる、もう一つの本命チョコ』
駅に着いて改札を出た私は、近くにあった周辺地図にかじりついていた。
「えーと、図書館、図書館……」
うぅー……気持ちが焦っちゃってて、なかなか見つけられないよぉ。
早く俊光君のところに行きたいのにぃっ……と思えば思うほど、余計に焦ってきちゃうっ。
地図の前でオロオロアセアセしながら図書館を探し続けていると――
「……えー、いいじゃないですかぁー。これから私達と一緒にカラオケ行きましょうよぉー」
「んー、まいったなぁ。どうすっかなぁー?」
「…………へ?」
耳障りなすんごいキンキンした女の人の声と、低音の艶っぽい男の人の声が、私の耳についた。
んん? 今の男の人の声、どこかで聴いたことがある……よね?
顔だけ振り返ってみると、私から少し離れたところには、
キレイめな格好をした女の人が三人と、
その三人に囲まれた――背がスラッと高くて、やたら大きい紙袋を肩にかけている、塩顔の男の人が……
って、あの人はっ――
「とっ……智樹さんっ!」
「……よぉ、菜子ちゃん。奇遇だなー……おぉっと」
俊光君の親友だと分かるや否やダッシュして駆け寄ると、智樹さんの胸元にガッシリと掴みかかった。
「と、智樹さんっ! 図書館はっ……図書館はどこですか!? 私っ、俊光君に会いたくてっ、それでっ……」
『俊光君に会いたい』という想いしかない私は、挨拶すらする余裕もなく、智樹さんを掴んだままチカラいっぱい前後に揺らして、図書館の場所を尋ねた。
「うん、菜子ちゃん。ちょーっと落ち着こうな。
そんなに慌てなくても、図書館は俊光を連れて逃げたりしないから」
「あっ……ご、ごめんなさーい……」
会って挨拶もせずにいきなり体を揺らして物を尋ねるという無礼者な私にも、智樹さんは笑いながら優しくどうどうとして宥めた。
「んならさ、オレが図書館まで案内してやるよ」
「え、いいんですかっ?」
「はは、もちろん! 図書館なら、この先の公園の敷地内にある並木道を抜けたところにあるから、すぐ着けるよ」
「わぁー良かったぁー。ありがとうございますっ」
これで俊光君に間に合う。智樹さんに会えるなんて、私ってばツイてるぅー!