俊光と菜子のホントの関係
第2章 『俺と菜子』
「なぁ……美都子(みつこ)」
「ん、なあに? 勝治(かつじ)さん」
「俊光と菜子にはいつ話そうか――『あの事』を……」
「あの事、ね……。やっぱり、いつかは言わないといけないのかしら……?」
「あぁ。いつかはどうしても知られてしまう時が来る。
だから、俺達からちゃんと話さないとな……」
「まだいいんじゃない? そんなこと考えなくてもー。
『血が繋がってないにしても』
あの子達はかけがえのない兄妹に変わりはないのよ?
私と勝治さんだってそうよ。
私は俊光の本当の母親だけど、菜子のことだって本当の娘だと思ってる。
勝治さんは菜子の本当の父親だけど、俊光のことだって、生まれた時からずーっと本当の息子だと思ってる……でしょ?」
「それは、もちろんそうだとも。
二人もそのことを知った時、素直に受け入れてくれればいいけどな……なんて、都合のいいことを考えてしまうけど」
「そうねー。俊光はしっかりしてるから大丈夫そうだけど、菜子はもしかしたら……ショックを受けちゃうかもしれないわ。私達家族がホントに大好きだから」
「かもなぁ……。それだから、打ち明ける時は慎重にいかないと。親戚にも知り合いにもずっと口止めしてもらってるから、俺達が言うまではバレないだろう。
もし、他の誰かから聞いたりしたら、それこそショックを大きくさせるし、俊光と菜子からも信頼を失うかもしれない」
「えぇ、わかってる。
だったら……菜子が高校を卒業してからにしない? その頃なら菜子もある程度落ち着いているだろうし、その方が打ち明けやすいと思うんだけど……どうかしら?」
「うん……そうだな。君がそう言うなら、そうしよう」
「勝治さんってば、昔からそればっか」
「そうか? それじゃあなんか俺って、自分がないみたいじゃないか」
「そうかもねー、ふふっ」
「…………」
そう……だったんだ。
俺は――母さん側の子。
菜子は――父さん側の子。
俺と菜子は――血が繋がっていない。
ホントの兄妹じゃ、なかったんだ……。