俊光と菜子のホントの関係
第21章 『大事にしたい。なのに……』
*
菜子の部屋のベッドに、並んで腰を掛けた俺と菜子は、アルバムの中に詰まった思い出を懐かしく眺めていた。
「あははっ。私も俊光君もちっちゃいねー」
菜子が弾んだ様子で、膝の上のアルバムをめくっていく。
「俺、この辺からなら、なんとなーく覚えている気がする」
俺が指を差して示したのは、『俊光四歳・菜子一歳』と書かれたメモが貼ってあるページ。そのページには、どこかのデパートの屋上遊園地で乗り物に乗って遊んでいる写真が、数枚貼られている。
「私なんてまだ一歳だったから、これっぽっちも覚えてないけど……こうして写真を見ていると、覚えていなくても懐かしい気持ちになれるもんだね」
「あぁ、そうだな」
「……あー。この私、乗り物が怖くて泣いてるー」
菜子が指差してぼやいたのは――馬車の形をした、硬貨で動く乗り物に、俺と菜子が二人で乗っている写真。楽しそうな俺の隣で、嫌そうにベソをかく菜子。その菜子に、母さんが困ったように笑いながら手を差しのべている。
「お前がこの程度の乗り物で泣くなんて信じらんねぇな。今なんて絶叫系の乗り物が大好きで、毎回ヨダレ垂らしながらヘラヘラ笑って乗っているのに」
「ひどーいっ。ヘラヘラ笑ってるのは認めるけど、ヨダレは『毎回』じゃなくて『たまに』だもんっ」
「いや、『たまに』でも中々だと思うけど」
「ふーんだ。何さ、絶叫系の乗り物が全然ダメなクセにー」
「うっ……」
菜子に痛いとこを突かれて、俺は押し黙った。
菜子の言うとおり、俺は昔から絶叫系の乗り物が、『大』が付くぐらい苦手で。なんかあの、落ちる時に『ふわっ』ってなるのが、すんげー恐怖でしかないんだよな。菜子に強引に誘われて(しかも、可愛くお願いしたりするから、余計にタチが悪い)何回も乗らされているけれど、全くもって慣れない。
菜子は勝ち誇ったように「んふふー」とニンマリしながら、次のページをめくった。