俊光と菜子のホントの関係
第21章 『大事にしたい。なのに……』
屋上遊園地の次は――大自然に囲まれた、澄みきった川で遊んでいる風景だった。父さんが車でよく連れていってくれたこの川は、一都二県にまたがっている一級河川で、ここから電車でも一本で行けるところにある。
どの写真も、俺と菜子は服を着たまま、川の浅瀬でハシャいでいて全身ずぶ濡れ。その中で、俺がやめてほしそうに顔をしかめているのに、ニコニコ笑顔の菜子が川の水をかけまくっている画が目についた。一緒に写っている父さんは、膝から下の足だけ浸かり、そばで俺達のことを微笑ましく見つめている。
「にしても……三十代のお父さんとお母さんって、今よりも、ものすごーく若いよねー」
菜子が失礼なことをしみじみしながら言ったから、
「こうして過去と見比べてみると、今でも『若い』と持て囃(はや)されている二人も、ちゃんと歳を取っていってるって分かるよな」
俺も一緒になっていじると、菜子はぷはっと吹いた。
「やだぁ、俊光君ったら超失礼ー」
「何言ってんだよ。お前も大概だぞ」
隣の部屋で、すでに就寝中であろう父さんと母さんに、常に気を遣って声を抑えているつもりなんだけど。話が盛り上がってしまうと、つい声のボリュームを忘れがちだ。
まぁ……この家の壁はそこまで薄くはないからな。とんでもなく大声で叫んだり、さっきのリビングでの菜子と母さんみたいに大笑いしたりとかさえしなければ、少々ボリュームを忘れてしまっても、丸々聞こえてきてうるさいってことはないだろうけど。