俊光と菜子のホントの関係
第22章 『真夜中のオーマイガー』
「泣くなよ。お前は悪くないんだから」
「ぐすっ……でもぉ……」
「元はと言えば……俺が、優しくゆっくりとすることが出来なかったせいだよ。デリケートな行為なのに、理性が切れてしまったがために、俺自身のコントロールが利かなくなって、焦って。それで……お前に痛い思いをさせたんだ。
ごめんな、菜子」
「っ、俊光君……」
「この顔の怪我は、その代償だと思って受け止めておくよ。だからもう、何も気にするな」
俊光君は、腫れた頬と傷ついた口元の辺りを人差し指で差しながら、柔らかく笑みを浮かべて言った。
もう……俊光君ってば優しすぎるよ。せっかく涙が止まったのに、違う意味でまた泣いちゃうじゃん。
口をへの字につぐんで、第二次涙腺大崩壊にならないように堪えていると、
「いい加減、元気だせ……よっ、と」
「っ、あぁーーーーっ!」
俊光君が、今最大級の弱点である私の足を、つんって突っついてきたぁーっ!
強烈に痺れを感じて思わず叫んじゃうと、俊光君は面白そうに笑う。
優しくしておきながら、今一番してほしくない意地悪をするなんて、ひっどぉーい!
「むぅーっ。お返しだぁ、このぉーっ!」
「っ、だぁーーーーっ!」
私も俊光君に、私と同じ弱点でもある足を、つんってしてやった。俊光君も痺れに、もがいて叫ぶ。
「お前っ……やめろよなぁっ。また鬼が来るだろっ」
「何よー、俊光君からやったんでしょー」
足の突っつき合いをしていたら、心にいっぱいだった暗くて重い悲しみが、キレイに消えてなくなっていた。気づけば、明るく軽やかな気持ちでいっぱいになっていた。
私達、懲りずに笑ったりハシャイだりしちゃっているけれど……
この俊光君と一緒なら、またお母さん(鬼)が来て正座でお説教の刑になってもいいや――
「……あんた達。また同じ目に合いたいの?」
「っ、うわぁーーっ!」
ドアの隙間から、お母さんが冷めきった表情で覗き込んでいた。私と俊光君は、痺れにじゃなくて、恐怖で叫んだ。
ごめんなさい。私、前言撤回する。やっぱり怖い。俊光君と一緒でも、正座でお説教はもうたくさん。お腹いっぱいだよぉー。