俊光と菜子のホントの関係
第23章 そして翌日――
「じゃあ、俊光君……」
「ん?」
「……んっ」
「んっ!? それはまさかっ……」
「約束の、チュー」
「お、お前なぁっ。ここ、リビングだぞっ」
と言っても、菜子はタコのモノマネをやめない。その前に、『約束のチュー』って……。また可愛いことを言ってくれるなよ。
「えー、いいじゃん。オーマイガーは出来なくても、キスならいいでしょ? ね? 昨日みたいなベロベロチューじゃなくてもいいからー」
「ベっ……」
その菜子語だけは、絶対に移らないように気をつけよう。
「ねー、俊光君ってばー。んっ」
「う…………たくっ、しょうがねぇな……」
やれやれとしながらも、菜子の肩をしっかりと抱き、俺の方へ引き寄せる。タコと見まがうキス顔がぐっと近づくと、俺もだんだんとその気になっていき、胸が高鳴りだす。
まぁ……大丈夫か。父さんと母さんも寝床についたばかりだから、すぐに降りてきたりとかはないだろ。
「菜子……」
「俊光君……」
いい雰囲気になったところで、お互い顔をゆっくりと近づけていく。
唇同士がくっつく数センチのところで――
「……おっ。お前達、今日はちゃんと大人しくしてるな」
「っ、わぁーーーーっ!」
リビングの出入り口の方から聴こえてきた、父さんのノンビリとした声に、二人で同時に驚いて叫び、ソファーから飛び上がった。
俺は咄嗟に、菜子の下まぶたを、両方とも親指でベロンと捲った。
「ななな菜子っ。おおおお前っ、スゲー長いまつ毛が目の中に入り込んでるぞっ!」
「ひゃあっ! ちょっと、俊光君捲りすぎーっ! 下まぶたが伸びちゃうじゃんっ!」
「はははっ。お前達はホントに仲がいいな。けど、母さんには気をつけるんだぞ」
「は……はーい……」
父さんは、俺達のことを微笑ましそうに見つめてからリビングを離れ、二階へと上がっていった。
あ……あっぶねー。何とか誤魔化せた。父さん、トイレか何かで降りていたんだろうな。
やっぱり父さんと母さんが家に居る時は、部屋以外のところで恋人同士になるのは避けた方がいいな。
にしても……父さん。いくらなんでも鈍すぎるぞ。