俊光と菜子のホントの関係
第24章 エピローグ『感謝』
「ーーーーっ、勝治さんってばぁっ! いつまでもボケーっと突っ立ってないで、早く行くわよっ!」
「わわっ……!」
ちゃんと歩いていたつもりが、いつの間にか立ち止まっていたらしい。美都子がカッカしながら歩み寄り、俺の腕を力強く掴む。
持ち前のエネルギッシュさに、腕も心も引っ張られる。
「春香から離れがたいのはわかりますけど、こっちの家の掃除もしないといけないんですからねっ。まったく、ホントに天然でのんびり屋なんだからぁっ」
「わかった。わかったから、そんなに急かすなって。ほら、よく見てみろよ。この美しい景色を。二人で眺めながらゆっくりと歩いても間に合うだろ?」
「いちいち勝治さんの呑気に合わせていたら、間に合うものも間に合わなくなるのっ」
……ははは、参ったな。美都子ばかりに『やれやれ』と思っていたが……俺も大概だな。
春香や、春香の両親だけでなく、壮大な空も、のどかな町も、勇ましくそびえる日本一の山も。ボケーっと考えがちな俺と、俺をグイグイと引っ張りながらせっつく美都子を、いつまでも笑いながら見ているような気がして、ちょっと照れ臭く感じた。
『俊光と菜子のホントの関係』
To be continued……