俊光と菜子のホントの関係
第26章 ~俊光と菜子の思い出ショートストーリー~
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昨日、中一の妹・菜子とケンカした。
そばで見ていた父さんと母さんが「そんなことで」と呆れ返るぐらいの、しょうもないことで。だから、あえて原因は語らないけど。
言い合いをしている時は、菜子はもちろん、俺もかなり頭に血がのぼっていた。けど、一晩寝て起きてみたら、怒りも大分落ち着き、気持ちにもゆとりが出来ていた。
朝、菜子に会ったら謝ろうとも思えた。
なのにアイツは……
「ふーんだっ!」
と、俺から顔を思いっきり背け、とっとと学校に行きやがった。
アイツ……人がせっかく謝ろうとしていたのに、何だあの態度はっ。
あーそうかよっ。ならもう知らねーぞっ。あとで泣いて謝ってきても、絶対に許してやんねーからなっ!
怒りが復活し、朝ご飯に八つ当たりをしてガツガツとがむしゃらに食っていると、母さんが、
「はーい俊光ちゃん。これどうぞ」
人を甘やかすような声を出しながら、テーブルの上に何かをポンッと置いてきた。
『俊光ちゃん』だなんて、明らかに俺のことをからかっている母さんに、更にムカつきが加速する。でもとりあえず、置かれた物に目を向けて見てみた。
青のチェック柄のハンカチみたいな布に包まれた、箱っぽい形をしたそれは、
「もしかして……お弁当?」
「そうよ。今日のお昼はこれね」
「へぇ。母さんがお弁当を作ってくれるなんて珍しいのな」
母さん、『普段のお昼のお弁当なんて面倒臭いから作らないわよ』宣言をしていたのに、どういう風の吹き回しだろう。
俺の怒りを察してのご機嫌取りか、と勝手に憶測していたら、違かった。
「それはねー……『可愛い妹』が、お兄ちゃんのために作ったお弁当なのよ」
可愛い妹……てことは、
「えっ、菜子が?」
「ていっても、あのコまだそこまで料理が出来ないから、半分お母さん作だけど。
ちなみに菜子が担当したのは、玉子焼きとウィンナーと……あと、ご飯の盛り付けよ」
「……そうなんだ」
何だよ菜子。そうならそうと、自分で渡してくれればいいのに。ツンデレかよ。
たく……しょうがないヤツだな。
「あらやだっ。俊光ちゃんったら。つり上がってたお顔が緩んじゃってるわよー」
「っ! べっ、別に緩んでねぇよっ! ていうか、『俊光ちゃん』って呼ぶのをやめろっ」