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俊光と菜子のホントの関係

第26章 ~俊光と菜子の思い出ショートストーリー~



 高校の昼休み。いつものように智樹と屋上に来ていた。


「いいなぁ、菜子ちゃんからのお弁当。オレも作ってもらいてぇー」

「半分母さん作だけどな」


 羨ましがる智樹に、俺は冷静を装った。

 じゃないと、また顔が緩んでるとか言われそうだから。


「中身はどんな感じ?」

「さぁ? 俺も実際にはまだ見てないんだ」

「じゃあ早く開けようぜ」

「なんか、お前が食うみたいだな」

「いいだろー。菜子ちゃんからの兄ラブを、オレにも分けてくれよ。
 お前の物はオレの物、オレの物はオレの物なんだから」

「どっかで聞いたことあるな、それ。ていうか、結局お前だけの物かよ」

「いいからいいから、ほらほら」

「……はいはい」


 まぁ……俺も早く見てみたいんだけど。

 もらった本人よりもウキウキして覗いてくる智樹をよそに、俺は包みの結びをほどき、お弁当箱の蓋をパカッと開けた。


 おかずは、母さん作であろう唐揚げときんぴらごぼうと、彩りのいいプチサラダ。それと、菜子が担当したという玉子焼きとウィンナーが、隙間なくしっかりと入れられている……が、


 ご飯の方を見た途端……はたと止まった。


「…………な、何だこれは……」


 白いご飯の上には――


『ソーリー』


 というシンプルな海苔文字が。

 あまりの殺風景さに唖然としてしまったもんだから、これが『菜子からの謝罪の言葉』だという認識に至るまでに、少し時間がかかってしまった。


「ぶっ……だはははははっ! すげーウケる菜子ちゃん! なかなかシュールな弁当作るのなー!」


 智樹は隣で、腹を抱えて笑いだした。


 おいコラ、菜子。これで謝ってるつもりか?

『ソーリー』って、お前は欧米かっ。ていうか、ソーリーぐらい英語で書けよっ。

 それにな、『ソ』と『リ』のそれぞれの角度が微妙に怪しくて、見ようによっては『ソーソー』とか『リーリー』とかとも読めるぞ。

 どうせカタカナにするなら『ゴメン』でもいいじゃねぇかよ。……まぁ、海苔文字は『ソーリー』が一番作りやすかったんだろうけど。


「……っ、たはっ。はははっ……」


 これを俺のために、慣れないことをしてまで作ってくれたんだと思うと、あとから笑いが込み上げてきてしまった。


 はぁーあ……もう完全に怒りが失せた。


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