俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
メインも、食後のデザートも食い終わり……
「えーっ! お兄さん、あそこの大学なんですか!? すごい。ホントに頭いいんだぁー」
「いや、俺なんてまだまだで。俺よりも頭のいいヤツ、たくさんいるし」
「あたし今度六年生で、中学受験もするから、お兄さんに勉強を教わりたーい」
「あーっ、二海ズルいっ。私も中学の数学とか聞きたいのにーっ」
「お姉さんは、顔は子供みたいなのに、何でオッパイがそんなに大きいの? 小学二年生のわたしでも、お姉さんみたいに大きくなれる?」
「へえっ!? えーと……私のお母さんが言うには、食べ物を食べすぎてるから、頭の栄養が胸にも行っちゃってるんじゃないかって。だから、いろんな物をたくさん食べたらいいかも……?」
「三久来姉ちゃん、オッパイ大きくなったら、四穂にも触らせてー」
「いつちゃんもぷよぷよしたいー」
母親の店員さんに『いい加減にして』と叱られたはずの五人姉妹が、またテーブルにやってきては、俺達兄妹にわちゃわちゃと絡む。けど気づけば、五人姉妹とすっかり打ち解けていた。
俺を取られまいとガードしていた菜子も、今じゃ警戒心を解き、五人姉妹の中に埋もれている。『このお兄ちゃんはダメーっ!』って言ってたクセに、自分がこの家の子になりそうな勢いだ。
やがて店内は、お客さんの入れ替わり立ち代わりで慌ただしくなる。それを合図に、菜子と重い腰を上げ、レジで会計を済ませた。
「おにいちゃんとおねえちゃん、もういっちゃうの?」
愛らしい眉をハの字にし、愛くるしい口を尖らせる、一番下の五津菜ちゃん(名前もすっかり覚えてしまった)。
小さい子に寂しそうにされると、胸が痛むな。
仕方ないんだけど罪悪感は否めなくて、俺はしゃがんで目線を合わせた。
「ごめんな。お兄ちゃんとお姉ちゃんは、まだ行くとこがあるから」
「もうこないの? またすぐきてくれる?」
「うーん、そうだな……。すぐには来れないけど、またいつか鎌倉に来たら、めえめえにも来るよ」
俺の妹は菜子だけだけど、それとは別に、この五人姉妹とはまた会いたいって思える。
「わーい! じゃあ、ゆびきりげんまんだよっ」
「あぁ。ゆびきりげんまんだ」
ぷはっ。これも菜子と、しょっちゅうやってたな。
俺も幼い気持ちで、無邪気な小指と絡ませた。