俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
「……そういや、お兄さんとお姉さんの名前は、何て言うの?」
「えっと、いけ――」
「すいませーん! 注文まだですかぁー?」
教えようとしたら、他のお客さんの声に遮られてしまった。店長さんは、ハッとして焦りだす。
「はーいっ、ただいまーっ! やべぇ、調理の途中だったんだった」
それにもかかわらず、俺達を見送りに来てくれたんだ。なんか申し訳なかったな。
「菜子、早く出ようか」
「そうだね。お店忙しそうだし」
「ごめんな、最後慌ただしくて。また来いよっ!」
「……はい」
いきなり失礼なことを言い、いかにもテキトーでいい加減そうだけど……お客さんのための料理はとても旨くて、家族はこんなにも賑やかで楽しい。
今更ながら、この店長さんからも、もっといろんな話を聞いてみたかったって思った。
それはまたいつか、めえめえに来た時にでも……。
「よし、お前達も手伝えっ!」
「はーいっ。お兄さんお姉さん、バイバーイ! また来てねっ!」
バタバタする一家に手を振り、どこか名残惜しさも感じながらも、菜子と店をあとにした。