俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
店からある程度離れてから、どちらともなく指を絡ませ、繋いだ。菜子のほんわかな体温が、俺の左手に伝わり、めえめえでぬくもった身体を更に温める。
「俊光君。また、めえめえに来ようねっ」
「あぁ」
「その時も……『デートで』と思って、いいんだよね?」
内心ちょっとだけ、『父さんと母さんも連れて、四人で来るのもいいな』と考えていたのに……モジモジと恥じらいながら訊いてくるとかされたら、
「あぁ。またデートで来ような」
って、言うしかなくなるだろ。
天然で、俺に答えを一択しか与えなかった菜子は、「ふんふんふーん……」と定番の鼻歌を歌いながら、ピョンピョンと跳ねるように歩きだす。
可愛さに、俺も心をキュンと跳ねさせられる。
……父さんと母さんは、たまに二人で旅行してるから、いいよな。
都合のいいように解釈をしつつ、観光を再開。
鎌倉のシンボルでもある大仏様の中に入ったり、
弁財天で、お金が増えますようにと祈りながら、お札を洗って清めたり、
湘南の海に浮かぶ島に渡っては、飽きずにまた食べ歩いたり(主に菜子が)、
日本一の山が、近くに感じられる程の大きさで眺められて感動したりと、
二人で観光を存分に堪能していった。
行くとこ行くとこで、いちいち素直にハシャグ菜子のそばいるだけでも、俺は十分楽しくて。
そういった時間はお決まりの如く、あっという間に経ち。高々と昇っていた太陽も、だんだん西へと傾きつつあり、今は町一帯が、優しいオレンジ色に包まれている。
サプライズの時にも、刻一刻と近づく。
鎌倉からのローカル線の旅が終わりを告げる頃には、俺の胸中はすでに、期待で膨らみきっていた。