俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
「え、えーっとぉ、わ、わたくしどもは、お都心から遥々お観光においでなすった者でござりましてですね、お曲者とかではないのでありんすよ……」
って、うわぁーんっ! 私のどヘタクソぉー! ど緊張でお口がガチガチだから、言葉の変さが余計に増し増しだよぉー! 女の人も、口に手を当ててお上品にクスクスしてるしー!
「お前なぁ、テンパりすぎだぞ」
「だっ、だってぇー……」
一人でパニクってワタワタしていた私に、俊光君もウケながら一歩前に出た。
「あの……数日前にネットで予約をしました、池崎ですが」
「っ!?」
すっすっすっ……数日前に、ネットで予約をしましたぁーっ!?
また突拍子もないことを普通にぶっこく俊光君に、私のアゴは、またアガアガになっちゃった。
けど女の人の方は、私みたいに俊光君のぶっこいたことにアガアガしないで、素敵に微笑み返す。
「はい、池崎様ですね。ご予約承っております。道中お疲れ様でごさいました。
それではこれからフロントにて、チェックインのお手続きをお済ませいただいてから、お部屋の方へとご案内を致しますので。どうぞ、中へ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「…………」
う……ウソぉ……。何で?
だって、今回のデートは『日帰り』の小旅行なんでしょ?
なのに……何で数日前に、旅館を予約しちゃってんの?
「菜子。とりあえず入ろう」
「あ……あが……」
私のワガママな『まだ帰りたくない』発言から、とんでもない展開になっちゃったよぉ……。
何がなんだかでアガアガも直せないまま、俊光君に手を引かれ、ご立派な旅館の中へと入っていった。
ー後半へ続くー