俊光と菜子のホントの関係
第4章 『私と俊光君』
目が腫れるまで泣きつくした私に、俊光君が、
「……あ、そうだ。今日一年生の女子から、調理実習で作ったクッキー貰ったんだ。一緒に食おうぜ」
と話しながら、カバンから手のひらサイズの袋を取り出してきた。
「え……俊光君が貰ったのに、私まで食べていいの?」
「いいって。すげー美味しかったから、菜子にもあげたいって思ってさ」
「そうなんだ。ありがとう……」
俊光君……そんな時でも、私のことを考えてくれてるんだ。すごく嬉しー……あ、いけない。感極まったら、また涙が出てきちゃいそう。
「これくれたの、いいコだったんだ。智樹がいっぱいもらってるのに俺にはないからって、お情けでくれてさー」
「ふーん……」
たぶん……違うと思う。その人はきっと俊光君が好きで、本気であげたんだと思う。キレイなラッピングから、俊光君への真剣な気持ちが何となく伝わってくるもん。
俊光君って、ホント天然で鈍感。
「じゃあ、お言葉に甘えていただきまーす。
……ん! ホントだ、おいしー!」
「だろー?」
「…………」
なんか、俊光君の毒気のない笑顔が、すごくステキに見える。
(はっ。ホントはお前――
自分の兄ちゃんを、『好きな男』として見てんじゃねぇのー?)
……もしかして、そうかも。
私、俊光君のこと『理想のタイプ』じゃなくて、
俊光君そのものが――
「……好き……」
「…………は?」
「…………へぇっ!?」
私、今……俊光君に、『好き』……って言った?
しかも今の気持ちって、お兄ちゃんとして見て言ったんじゃなくて――『一人の男の人』として見て『好き』って言ったような……。
いや……いやいやいやっ! ダメだよそれはっ!