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でも、愛してる

第4章 4

 なんてことを言いだすんだこの人は、と思った。「というわけで」と言うが、なにが「というわけ」なのだとも思った。
 言い方も、直球すぎるし…
 だからわたしも、直球で返した。
 「わたしは、
  セックスをしたいとは、
  思っていません」
 「どうしてですか?」
 「する理由がないからです」
 「理由ならあります」
 「えっ?」
 「私が、
  手嶋さんと、したいからです」
 「それは、先生の理由です。
  わたしの理由じゃありません」
 「私の理由でも、
  手嶋さんの理由でも、
  理由なんですから、いいじゃないですか」
 「いいわけがありません」
 「そうかなぁ」
 「それに、
  どうして、
  わたしなんですか?」
 「手嶋さんを、好きになったからです」
 「急に言われましても…」
 「好きと、告白するのは、
  たいてい、急にだと思います」
 「そうでしょうけど…」
 「手嶋さんは、
  セックスが嫌いなんですか?」
 「まだしたことがありませんから…
  好きか嫌いか、
  わかりません」
 「したいと、思ったことは、
  ないんですか?」
 「それは…
  わたしだって、もう大人ですから…」
 「したいと思ったときには、
  するべきです」
 「するべき、なんですか?」
 「するべきですから、
  性欲があるんです。
  食欲や睡眠欲と同じです。
  食べるべきだから、食欲があるんです。
  眠るべきだから、睡眠欲があるんです」
 「それは、そうかも…」
 「してもいいと思える人がいたら、
  するべきです」
 「してもいい人、
  ですか?」
 「そうです。
  信頼できる人。
  安心できる人。
  そのほかにもあるでしょうが、
  そこは、自分で判断してください」
 「それが、先生だというんですか?」
 「そうです。
  私は、信頼できませんか?」
 「いい人だとは、思っていますが…」
 「私は、手嶋さんを第一にして、ほんとに手嶋さんを大切にします。
  私は、手嶋さんが気持ちよくなるセックスを、します。
  と、言ったはずなんですが?」
 「聞いてないように、思いますよ」

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