テキストサイズ

でも、愛してる

第2章 2

 「できたよ」
 二人で、できたものをテーブルに並べていく。
 ビールをグラスに注いで、
 「カンパイ!」
 「カンパイ!」
 「美味しい!」
 「よかった」
 「ステーキは、
  こんなふうに、なにもつけないのも、美味しいね」
 「岩塩と胡椒、それにガーリックだけは、すこし振っているけどね」
 「このサラダも、美味しい」
 「萌絵ちゃんは、ほんとに美味しそうに食べるね」
 「だって、美味しいんだもん!」
 「萌絵ちゃんは、
  食欲も、性欲と同じように旺盛なんだね」
 「もう!
  エッチ!」
 そうなのだ。彼はこういうふうに、突然エッチなことを言う。でも、ポンと言うだけで、そのあと下ネタに流れることはない。そしてその言い方も、「萌絵ちゃんは」とか「萌絵ちゃんが」と、わたしをもとにしたものが多い。
 それは、愛しあうときも、一緒だ。
 わたしが気持ちよくなるようにと、愛してくれる。
 片付けもおわり、コーヒーを飲んでいると、
 「萌絵ちゃん、
  タンスを買おうと思うんだけど」
 「タンスを?」
 「いま、萌絵ちゃんの下着なんか、
  私のと一緒に入れてるじゃない。
  それで、もう一つタンスを買おうと思うんだ」
「わたしは、いまのままでいいわ」
 「でも、
  萌絵ちゃんには、嫌な思いをさせたくないよ」
 「嫌とは、思ってないわ」
 「でも、タンスがもうひとつあったら、
  服も、もうすこし置いておけるよ」
 「そうか」
 「そうすると、
  洋服ダンスのほうがいいね」
 「そうね」
 「こんど、
  一緒に見にいってくれる?」
 「いいよ」
 清は、ほんとにいつも、わたしのことを、考えていてくれる。
 日常のちいさなことでも、
 「萌絵ちゃん、どう思う?」
 と、聞いてくれる。
 ほんとに、清は、優しい。
 こんなに優しくされて、わたしは、幸せ者だ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ