土壇場の恋・あなたならどうする?
第3章 先の見えない暗闇で
目的の横浜・元町へ近付きつつある車窓へ目をやり、
小さなため息をついた。
今日は大きな商談をひとつまとめた帰りだ。
精神的にもかなり困憊しているし、
出来ればこのまま山手の自宅へ真っ直ぐ帰りたい
というのが本音だった。
ただ、隣に座る男、組織の相談役の1人で
現会長の懐刀とも言われるキレ者・八木 由伸が
言うように、この世界に身を置く以上こういった
義理ごとは必要不可欠な営業なのだ。
古今、”武闘派”を掲げてきた極道も
新・暴力団対策法の施行に伴い、
やれ出入りだ抗争だといった即懲役送りになりそうな
荒っぽい事は滅多に起こさなくなった。
その代わり、
付き合いのある同業者や財界人の
祝い事へ顔を出したり、
新しいビジネスチャンスを開拓する事が組織の
主な財源になってきた。
フロント企業と呼ばれる多くの上場企業を展開し、
必要とあれば海外へだって傘下を増やす。
潤沢な資金源をどれだけ確保するかが、
どの組織にとっても生き残る上で最優先の重要課題
となっているのだ。