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愛は楽しく

第1章 愛は楽しく

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 園に帰って、園長に報告したら、なんで名前を聞かなかったのかと叱られた。
 あの人を知っている、という同僚がいた。
 塾の先生らしい。
 わたしが、お礼にいくことになった。
 帰宅途中に、その塾があるからだ。
 お礼なんていいのに、と言いながら、持っていったクッキーの箱をじっと見ていたのを、知っていますからね、勉さん。
 「うわぁ、
  すごい本」
 「どれでも、
  持っていっていいですよ」
 「わたし、
  児童書が好きなんです」
 「この辺にあります」
 サトクリフが、10冊もある。
 『アーサー王の最後の戦い』は、読んだことがない。
 そう言うと、
 「サトクリフを知っているなんて、
  ほんとに、
  児童書が好きなんですね。」
 「これ、
  お借りしても、
  いいですか」
 「もちろんです。
  もし、
  時間があるようでしたら、
  コーヒーでも、
  いかがですか」
 「わたし、
  もしあれば、
  紅茶が、
  いいてす」
 「あります。
  FAUCHONという、
  フランスの高級紅茶です」
 「飲みたいです」
 本格的なティポットで淹れてくれた紅茶は、美味しかった。
 「持ってこられた、
  クッキーを、
  開けましょうか」
 じっと見ていたことは、言わなかった。

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