こいぐるい
第1章 おんな
ああ腹が立つ。
体が目当てなだけじゃないか。
そんな根性はもちろん論外だが、そんな根性の男にやすやすと心を持っていかれてる自分に1番腹が立つ。
ふと目に飛び込んだ時計は22時をさしていた。
いま手元にある食事を済ませて、
お風呂に入って、
髪を乾かして…
と冷静に考えるとゾッとした。
なぜならまだその工程を踏む前に、
今現在受けているショックの吐き出しを行わないことには寝ようにも寝られないと悟ったからだ。
『今度こそまともな恋しようと思ってたのにー!!』
《うん、わかるよ、わかるよその気持ちは。
でも雪乃に彼女いないって言ったんだったら、そっちが本当かもしれないじゃん?》
『えー…まぁ、その可能性もあるか…』
しかしおそらく、雪乃も真衣もなんとなく察していた。
2人が口にした「ヒロシ彼女いない説」は望み薄だと。
『でも本当に…好きになれたのに…』
ようやく見つけた宝箱の、蓋を開けたらまた地図が入っていた。そんな感覚だった。