惰性同棲
第1章 プロローグ
「なあ姉ちゃん、2人でこんなとこ脱け出そや」
先ほどまでには考えられないドスのきいた低い声で、囁かれる。
心臓が跳ね上がるくらいに痛くなる。
「え…」
「大人しいフリして外出た思ったらやっぱりタバコや。その目、仕草に全部でとんねん。なあ、こういうのが好きなんやろ?」
近くでよく見ると、ピアスもバチバチに開けていて、首には少し長い髪の間からワンポイントでタトゥーが入っているのがわかる。
やばい、と思った。このままでは犯される、と。
でも心は鷲掴みにされていた。
なにも言えないでいると、通りかかったタクシーを彼が止めた。
呆然としたままタクシーに乗せられて気付いたらこの家に来ていた。
それがもう4ヶ月も前の話だ。
多分カイトは私の顔と性欲が好きだっただけだし、私も彼の顔と強引さが好きだっただけだ。
本当の恋愛ってなんだっけな。