惰性同棲
第2章 惰性同棲
「ただいまー」
深夜3時頃、今日は帰ってこないのかと思っていたカイトが帰ってくる。
ライブハウスで今日は働いていた。
私は晩酌をしつつニーチェを読む、という鬱な夜を迎えていた。
「おかえり〜」
鬱な気分を引きずって玄関に迎えにいくと、カイトの頭から血が流れていた。
「え、ちょっと待って。頭、どうしたん?」
「なんやねん、俺の頭イッてもうてるってか?」
あまりの酒臭さにまた驚く。飲み過ぎだ。
「違う、怪我。おでこ切れてる」
「うわ、マジかー。痛いわあ。晴子」
靴箱に手をついて、カイトが顔をしかめている。
絆創膏を取ってきて、なんとか応急処置をする。
あまり深い傷ではなくて、なにが起こったかは知らないけど、重症では無かった。
「テンション上がったんは覚えてるけど、なんで怪我したかわからん」
ベロベロのカイトをベッドまで介抱する。
「晴子待って、一緒に寝よ」
部屋を去ろうとする私を呼び止める。
「いいよ」
一緒に布団に入ると、大きな体でギューっと抱きしめられる。タバコ臭くて酒臭いけど、カイトらしくてそれがいい。