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Fake it

第1章 2018 秋

【智side】

ライブの打ち合わせ中に、オイラのスマホからメールの着信音が鳴った。

ちょうど、構成について若干空気がピリついてたところだったから、メンバーも含めスタッフさんの何人かが、オイラをとがめるように視線をこちらに向けた。

連日打ち合わせを続けている松潤は目の下にクマが出来ている。

「ごめん、マナーモードにしとくの忘れた」

謝罪して、慌てて設定を変える。

シーンと静まり返る中、松潤が休憩を提案した。

「ちょっと気分転換が必要かもね
15分、休憩しましょう」

ガタガタとパイプ椅子が立てる音の中、ゴメン、ってつもりで潤を見やる。

気にしないでいいよ、って意味なんだろう、一瞬、目の光が優しくなったから、うん、って頷いて見せた。

オイラを視線だけでフォローしてくれる松潤。

大人になったなぁ、としみじみ思う。

松潤だけじゃない、みんな、大人になった。

いつまでも変わらないのは、きっとオイラだけなのかもしれない。

いや、全く変わってない、ってわけではないんだろうけど。

変わった、って程でもないし。

ああ、そういう曲、あったっけな。



席を立つ人々の気配に紛れて、届いたメールを見ると、孝太郎さんからだった。

西伊豆の大野丸のロケ以降、孝太郎さんとはちょこちょこと連絡を取るようになっていた。

オイラの方で彼に頼みごとをしてて。

調べてくれることになってるんだけど、メールを見ると、もう少し時間がかかりそう、という内容だった。

返信を打ち始めた時、突然頭上から声がかかった。

「誰から?」

振り向くと、翔君がオイラの真後ろに立ってた。
誰からのメールなのか、ってオイラに訊いてる。

声にトゲがあった。

表情が硬い。

「…ん、ちょっと」

いつから後ろにいたんだろう。
てっきり席を立って外に出たんだと思っていた。

メールの中身を見られただろうか。

オイラは翔君からスマホへ視線を戻して、メールのアプリからホーム画面に切り替える。

頻繁に見ている動画サイトのアプリを立ち上げて、新着動画をチェックしている振りをした。

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