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Fake it

第4章 Blue dream

【智side】

タクシーの後部座席に並んで座って。
翔君が手を繋いでくれてた。

「ふふっ」

今日は嬉しいことがあったから、何だか顔が笑ってしまう。
だって、想像したら楽しいから。

「ご機嫌だね」

「うん?…うん、ふふっ」

窓の外を見たままで、返事をする。

酔った頭で見る街の灯は、いつもよりぼやけて、優しく見えるから好きだ。

明日のことも、将来のことも、何にも考えないで。
今、感じてることだけしかない。

「あのねぇ、きっと気にいるよ」

「俺が?何だろう」

オイラが酔っぱらってると、翔君はいつもよりも、もっと優しい。

「ふふっ、まだナイショ」

きっと楽しいよ。

あれ?
でも、どうかな。

翔君を調理場に閉じ込めるのはオイラの作戦だから、翔君本人は楽しくないのか?

『え~嘘だろ、ホントに作っちゃったの!?』

そんなふうに大騒ぎするかもしんない。

『マジかぁ…』って。
嬉しそうに困った顔をするんだ。

そしたらオイラ、澄まして言うの。
お昼ご飯は翔君の担当だからね、って(笑)。

『なんで俺?じゃんけんにしよう』

「ふふっ」

会話がどんどん想像出来て、楽しい。

実現しなくてもいいんだ。
そういう場所があれば、夢は見ていられる。

いつか、翔君が来るかもしれない、って。
想いながら、のんきに暮らせる場所。

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