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Fake it

第4章 Blue dream

【智side】

ロケで西伊豆に行った時、船の上から孝太郎さんが教えてくれた。

自分の親しくしてるご夫婦が、小さな民宿をやってる、って。

指を差して示してくれた小さな建物は、他の観光地らしいホテルに比べると全然主張していなくて。

こじんまりとしてる感じが良いなと思った。

子供のいないご夫婦が二人だけでやっていた宿だったんだけど、少し前にご主人が亡くなった、って話で。

売りに出してるけど、なかなか買い手がつかないから、もし誰か、関心を持ちそうな人が居たら、是非紹介してくださいって言われた。

奥さんが、出来れば民宿を続けてくれる人に買って欲しい、自分が生きてるうちは、ここに住み込みにして働かせて欲しい、って希望してるそうで。

そうなると、どうしても買い手がつかない、って。

なんでだろ、何か興味が湧いて。

ロケの帰り、ここまで来たから線香を上げに行く、という孝太郎さんに、オイラもついて行ったんだ。

赤の他人なのに大丈夫かな、と思いながら、礼儀として焼香をさせてもらって。

仏壇に飾られた生前のご主人のお顔を拝見した時、突然、思った。

あ、この人なら大丈夫だ、って。

このお父さんが大事に守って来た民宿なら、悪い縁はない、って直感で思った。

ハワイで、番組の企画だったけど、5人で立派な家でBBQした時にさ。
翔君が、5人の家、じゃないけど、こういう場所があってもいいな、って、言ってたのを思い出した。

ハリウッドスターじゃあるまいし、ハワイの超豪華別荘なんてオイラには似合わないけど。

例えば、日本の中でも、こういう場所だったら、オイラでも溶け込めそうかな、と思った。

住むんだとしても、今すぐってわけにはいかないから。
いつか、もっと年を取って、5人の仕事がなくなった後の話にはなるんだけど。

もう都会のマンションで、閉じこもって暮らさなくても良くなったら。
こういうところで、生活したい。

ここのお母さんが残ってくれるなら、むしろ有り難いことだし。
オイラは名義だけで、下働きかなんかに使ってもらってさ。。

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