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Fake it

第5章 Red heart

【翔side】

仕事と仕事の合間。

移動中は言わずもがな、待ちと言う程でもないちょっとした空き時間が、俺にとってはかなり貴重だ。

俺は人からよくマメだと言われるけど、どうなんだろう。
本当のところは、そうでもない気がする。

単純に隙間時間を無駄にしたくないから、数分で出来ることをTO DOにして片付けているだけに過ぎないんだよ。

メールの返信を打つとか、食事に行く店に予約の電話を入れるとか、お世話になった人にお礼をしたり、お花を送る手配をしたり。

礼儀知らずな真似はしたくない、って方だから、もう習慣になってるだけで。

実はいざって時に限って、腰が重くなったりする。





この数日、隙間時間の度に、あの人に連絡しようとして。

だけど、短い数分で話せる内容でもなく。

何から話し始めればいいのかすらわからず。

結局スマホの画面を眺めるだけに終始してた。

しまいには、その数分を全部足したら合計何分になるんだろう、とか。
意味もないことをぼんやり思ったりして。

結局一日中、あの人のことを想ってる。

はぁ……。

我ながら根性なしもいい加減にしろよ、とうんざりだ。

相手があの人だと、俺はいつも勇み足か、二の足を踏むかで。

自分が世界一愚かな男になったように感じる。





移動の車中。
5分あればライブでやる曲の振りを1曲は確認できる、と思って。

タブレットで動画を再生するんだけど。

振りが一つも頭に残らないまま、画面の中であの人ばかりを目が追って。
空っぽな頭で眺めているうちに、気づけば動画が終わることの繰り返しだ。

ヨウツベとかに上がってる動画は数分の短いものが多いけど、ファンの子たちも、こんな感じで俺らの動画を見てくれてるんだろうか。

ほんのわずかな時間でも見入ってしまう程の、想いで。

「はぁ~…」

移動車の後部座席で溜息を吐きながら、俺はまたリハ動画の再生ボタンをタップする。





失敗した。





失敗した。





傷つけて。





嫌われた。





「はぁ~……」





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