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俺の男に手を出すな

第5章 お狐さま

【智side】

子供はオイラのことじーっと見てて。
それから、唇に人差し指を持って来て、小首をかしげてさ。

「つまり、迷子か?
それとも群れを追い出されたのか?」

って、言ったんだ。

なんか、全然かわいそうに思ってる口調じゃなくて。

明らかに自分の方が上、って思ってるのがありありで。

「追い出されたって…」

「違うのか?」

オイラはちょっと傷ついたの。
自分では家出したつもりだったけど、ほんとは追い出そうとしてわざと意地悪されたのかと思って。

「そんなふうに言わなくたって…
オイラ追い出されたの?
みんな、オイラが居なくなるように意地悪したの?」

「質問してるのはオレだ」

「…っ…ひっく…うっ…」

「あ」

「っく…おいら…
オイラ、ウチに帰りたいっ…
うぁ~ん」

「わあ!泣くな、人の子
子供の泣き声はうるさいだろっ」

「おまえだって子供だろっ
オイラもう帰るっ
うわ~ん、もう東京にかえる~」

「ああ、うるさいぞ
泣き止め、人の子!
大神様に聞こえるだろっ」

「おまえが泣かせたんだぁ~
おまえがっ…うぇ~」

うずくまって本気で泣いてたら、隣にふわって誰か座って。
背中にあったかい手が触ったの。

鼻水垂らしながら見上げたら、やっぱり平安時代みたいな衣装を着た、とってもイケメンの男の人が立ってた。

「翔次
いたいけな人の子を泣かせたりして…」

「翔太っ
オレが泣かせたんじゃないぞっ」

イケメンの声が優しかったからさ。
オイラ、この人に訴えるしかないと思って言ったわけ。

「きれいな神様
オイラ、泣かされたのっ…
ひっく…
群れを追い出されたんだろう、って
言われたんだよっ…うぇ~」






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