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俺の男に手を出すな

第5章 お狐さま

【智side】

「我らはこちらの大神様にお仕えする者
神ではないよ」

イケメンはオイラの隣に並んで座ってくれて。
大きな二重の目を三日月みたいに細めてニッコリ笑ってくれた。

それが、ホントに優しい笑い方なんだ。
どこか面白がってるみたいな感じでさ。

オイラが言いつけるみたいに訴えてるのも。
子供心に、本当に悲しかったことも。
全部、お見通しで。

お前の心はわかってるよ、って。
見守られてる安心感があるんだよ。

イケメンがきれいだからオイラ見惚れちゃって。

イケメンの方はね、尻尾はなくて、お化粧もしてなかったの。

でも、肌が透き通るみたいに白くて、厚みのある唇が赤くて。

凄く綺麗だった。

オイラ、急に泣きべそをかいてる自分が恥ずかしくなってさ。

着ていた服の袖で顔を拭って、立ち上がったの。





「お狐さま、オイラは東京の〇〇から来ました
オオノサトシです」

名乗っておじぎをしたら、イケメンは、お!って驚いた顔をして。
ますます目を細くして優しい顔になってね。

「夏休みだから、ばーちゃん家に遊びに来たの
ばーちゃんの名前はオオノ◇◇◇です
てきとうに歩いてるうちに、ここに着いたんだけど
神様にごあいさつしてもいいですか?」

オイラが言ったら、大きな手の平で頭を撫でてくれた。

オイラ、ひいばーちゃんに教わってたから知ってたんだけど。
お狐さまはね、礼儀には割と厳しいんだよ。

神様になると大目に見てくださるご存在が多いけど。
眷属のお狐さまは、やっぱりちょっと厳し目かな。

挨拶が出来ない人間や、失礼な態度をとる人間はお嫌いだね。

あ、そうだね。
ウチの事務所とちょっと似てるかもね。

上下関係が厳しいし、それぞれが修行して努力した結果、お力の差が出るんだ。

力の強さと見た目の美しさが比例してるんだよ。

だから礼儀にも厳しいし、怠ける人間はあまり好きじゃないみたい。

そのかわり、きちんとご挨拶して筋を通すと、こちらの話にもちゃんと耳を傾けてくださるし。

小さなことでも、お願いすると親身に動いてくださるんだ。





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