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俺の男に手を出すな

第5章 お狐さま

【智side】

「ありがとうっ
ね、翔太さまと翔次さまは兄弟?」

お狐さまに両側を守られて、お社に続く階段を上りながら。
見上げて訊いたら、翔太さまは優しく笑ってて。

うん、翔太さまは一緒に居る間ずーっと優しい顔だった。

ふふっ。

翔君がオイラを見る時みたいな、目で笑う感じだよ。

え?名前?

うん、それはオイラも気になったから訊いてみたよ。

「オレ達は眷属だ
人間が言う兄弟とは違う」

「そうなの?
でも顔がそっくりだし、名前も似てるよ?」

ああ、って翔太さまは頷いて。

「名は我らのお仕えする大神様から頂いたのだ
我らの真名は人が声に出せるものではないが
大神様は『天翔ける』という意味の名をお持ちでな
それ故、我らも仮名に『翔』の字を頂いた」

「…ふうん
アマカケル?」

「あっ、お前今カエルを思い出したな
アマガエルじゃないぞっ」

「この姿はお前にしか見えぬ
我らは日頃、人の姿はとらぬのだ
縁ある人の子の前に姿を現す時のみ
その者にとって大切な相手の姿をかたどる」

「…そうなんだ、むずかしいんだね」

そうか?って翔太さまは笑いながら繋いだ手を揺らして。

翔次さまの尻尾の先が、階段を上るのに合わせてぴこぴこ動いてた。





ね、ところで翔君?

この話、面白い?

オイラ、ちょっと尻が冷えてきたんだけど。

まだそれ、続けるつもり?








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