狂恋 ~狂おしい恋に身を焦がす~【BL】
第1章 10年ぶりの再会
人生ってのは、平凡でも地味でもいい。
平和であれば、なお良い。
好奇心から動いても、いつかは疲れてしまうものだ。
心も、体も。
オレはそれをよく分かっている。
過去に好奇心によって暴走し、危うく自分が壊れそうになった経験をしているからだ。
その経験以来、もう好奇心は抑え
ることにした。
何かに踊らされたり、乱されたりしないような生き方を選んだ。
まだ二十八歳にしては、年寄り臭くなってしまったと自覚している。
けれど暴走の代償が重く、辛くなることを知っているからこその選択だった。
このまま何事も無く、平和なままで生きていけたらと思っていた。
なのに…。
「本社から移動してきました。華宮かみや利人りひとです。これからよろしくお願いします」
パチパチパチと、拍手の音が響く。
ざわざわと社員達が話している。
内容は利人の容姿の良さだ。
高い身長なのに、着痩せする体にブランドのスーツが良く似合っている。
薄茶色の髪は少し伸びていて、細いフレームのメガネが琥珀色の瞳をより魅力的に見せていた。
日本人離れした容姿は、彼がハーフだからだ。
モデルをしていても不思議じゃないほどの美しさは、男女共々魅了させられる。
…が、オレは違っていた。
頭から足の指先まで、血の気がサーッと一気に下がっていた。
ここで倒れなかったのは、気力を振り絞っているからだ。
この会社の全社員が集まる食堂の中、倒れれば注目されてしまう。
オレの働いている会社は、大会社の子会社。
名前だけは有名だけども、ウチの会社自体は小さかった。
決して都会とは言えない街中にあって、働いている人達も穏やかで、あんまり出世とかには興味がない。
この地味さがオレにとってはとても居心地が良かった。
けれど今、利人がいては、居心地は地獄と言える。
鏡を見ずとも、表情が引きつっているのが自分でも分かる。
「利人…。まさか…違う、よな?」
オレは小声で呟いた。
けれど壇上に上がっている利人は、その声が聞こえたように、こちらを見た。
「っ!」
オレの驚いた顔を見て、利人は満面の笑顔を浮かべた。
(ようやく見つけましたよ)
利人の心の声が、頭の中に響いてきた。
それはきっと、幻聴ではない。
平和であれば、なお良い。
好奇心から動いても、いつかは疲れてしまうものだ。
心も、体も。
オレはそれをよく分かっている。
過去に好奇心によって暴走し、危うく自分が壊れそうになった経験をしているからだ。
その経験以来、もう好奇心は抑え
ることにした。
何かに踊らされたり、乱されたりしないような生き方を選んだ。
まだ二十八歳にしては、年寄り臭くなってしまったと自覚している。
けれど暴走の代償が重く、辛くなることを知っているからこその選択だった。
このまま何事も無く、平和なままで生きていけたらと思っていた。
なのに…。
「本社から移動してきました。華宮かみや利人りひとです。これからよろしくお願いします」
パチパチパチと、拍手の音が響く。
ざわざわと社員達が話している。
内容は利人の容姿の良さだ。
高い身長なのに、着痩せする体にブランドのスーツが良く似合っている。
薄茶色の髪は少し伸びていて、細いフレームのメガネが琥珀色の瞳をより魅力的に見せていた。
日本人離れした容姿は、彼がハーフだからだ。
モデルをしていても不思議じゃないほどの美しさは、男女共々魅了させられる。
…が、オレは違っていた。
頭から足の指先まで、血の気がサーッと一気に下がっていた。
ここで倒れなかったのは、気力を振り絞っているからだ。
この会社の全社員が集まる食堂の中、倒れれば注目されてしまう。
オレの働いている会社は、大会社の子会社。
名前だけは有名だけども、ウチの会社自体は小さかった。
決して都会とは言えない街中にあって、働いている人達も穏やかで、あんまり出世とかには興味がない。
この地味さがオレにとってはとても居心地が良かった。
けれど今、利人がいては、居心地は地獄と言える。
鏡を見ずとも、表情が引きつっているのが自分でも分かる。
「利人…。まさか…違う、よな?」
オレは小声で呟いた。
けれど壇上に上がっている利人は、その声が聞こえたように、こちらを見た。
「っ!」
オレの驚いた顔を見て、利人は満面の笑顔を浮かべた。
(ようやく見つけましたよ)
利人の心の声が、頭の中に響いてきた。
それはきっと、幻聴ではない。