オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第3章 私立・壬生四条高校
「プッ ―― もしかして、真に受けた?」
「あー、もうっ! 人が真剣に話してた時にっ」
「―― 出発、週明けになった」
「……??」
「……母さんがさ、ちょうど向こうの学校は
9月が新学期だからいいタイミングだろうって」
「……そう」
「って ―― たったそれだけ?」
「じゃあ、大泣きして”行かないで”って縋れとでも?
……うちら、まだ、親の保護が必要な学生なんだから
しょうがないじゃん。泣いたからって……」
言っているうちに感情が昂ぶってきた絢音の瞳から
大粒の涙がポロポロ溢れる ――。
「ご、ごめん ―― な、泣くなよ」
狼狽えながらも絢音の頬に流れる涙を拭ってやり、
「あやねってさ、俺の事ホントに好きか時々分からなく
なるから、物凄く心配になる」
「そんな……私、好きだよ。裕のこと」
そう言ってから ハッとして、
自分の言ったその言葉に顔を赤らめた。
「そ ―― そっか……なら、良かった……今夜の
パーティー、楽しみにしてる」
「うん。目一杯おシャレしていくから」
2人はここで別れた。
しかし、絢音は橘に”外出禁止”とまで言われ
きつく禁じられたパーティーに、どうやら内緒で
出向くつもりらしい……。