オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第30章 哀しい決意
明日に退院を控えた日の午後。
病室で絢音の卒業式が行われた。
学校にとっても神宮寺は毎年多額の寄付を
してくれる貴重な後援者で。
その神宮寺が目の敵にしていると言っても過言でない
女生徒と神宮寺の愛娘を同じ卒業式の席へ参列させる
のは、神宮寺を敵に回すようなものなのだ。
そうは言っても ”都立高校としての体面”も
保ちたいので、この卒業証書授与式には
忙しい時間を縫って東京都の教育委員会の教育長、
大林校長 ―― そして、神宮寺以外に
絢音を目の敵にしていた教頭と学年主任の迫田も
顔を揃え。
病院からは担当医の**と看護師長の刑部が。
絢音側の関係者としては姉の初音と親友・森下利沙
が参列した。
『―― 3年S組 和泉絢音殿。あなたは本校所定の
普通科及び商業科の過程を修了した事を証す。
2022年3月**日、東京都立港南台高等学校、
校長・大林則夫』
紆余曲折はあったにせよ、
これで絢音の高校生活は終わったのだ……。