オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第5章 交錯するそれぞれの思い
”もうすぐ離ればなれ” って、
感傷に流されるよう結構衝動的に体の関係を
持ってしまって。
あれ以来ほとんど連日のように、何かしらの
口実を作っては2人で逢い ――、
『―― 小遣い貰ったばっかだから、今日はホテル
入れるけど……どうする?』
『ホテルなんてもったいないから、いつものネカフェで
いいよ』
*** *** ***
『―― ね、絢音。今日はコレ、やって欲しいんだけど』
『え ――っ、こんなの、ここでやるの……』
『あ、どうしても嫌ならいい。俺、我慢する』
『……私、あんまし上手くできんよ』
『え ――っ、じゃあ……』
この日、私は初めて裕の男性自身を口で愛した。
一緒にいられるだけで満足、とか何とか言いつつも
毎回しっかりエッチして。
次に会えるのはおそらくクリスマス辺りかなぁ……
と。
予定より約1週間遅れで裕は留学先のハワイへ
旅立って行った。
世の中がいよいよ夏の行楽シーズン到来だなどと
うわっついていても、うちら受験生には関係ない。
刻一刻と迫る大学入試を控え、クラスメイトも
余裕なく毎日を過ごしているようだ。
今日まで何度となく提出してきた進路希望票――、
絢音はようやく担任始め他の先生方からも
薦められていた国立星蘭大学へ進学する事を
7割り方決めた。
本当は、うちの家計を第1に考え、
地元の優良企業に就職する気でいたのだ。
けど、もし2学期の統一模試で学内ベスト3位
までに入ったら、星蘭大への特別推薦枠を
自分の為に空けてくれると、校長と教頭が揃って
確約してくれたので、チャレンジする事にした。
学校の幹部達にしてみれば、次期新入生をなるべく
多く獲得する為、
たとえ貴重な推薦枠を犠牲にするとしても
”国立大に現役で合格した生徒を輩出した学校”
という実績が欲しいのだ。
それがたとえ、底辺高校の悪あがきだと言われ
ようと……。