オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第6章 体調不良、それは ――
裕と初めて肌を重ねたとき、
私は妊娠する可能性なんてちっとも考えなかった。
セックスすれば、
妊娠の可能性がある事くらい知っていたはずなのに、
それを自分の事として
真面目に受け取っていなかった。
10代の女の子には、安全日など存在しない。
避妊せずに無防備でセックスすれば、
いつでも妊娠する可能性がある。
私はあまりにも愚かだった。
自己弁護するワケじゃないけど、
これは私に限って言える事ではなく、
多くの若い女の子たちがそうなのだと思う。
学校ではあくまでも授業の一環として
教わっただけだし。
家でもそんなに突っ込んだ事は教えてくれなかった。
夏休みの最後の日、学校の夏期講習が終わってから
家族には内緒で病院へ行った。
でも、もしかしたら妊娠じゃないかも、
って期待が大きくて、かかった診療科は内科。
だけどお医者さんから
『妊娠されてますよ。なるべく早く産科の診察を
受けて下さい』
と、言われ、目の前が真っ暗になる。
病院からの帰り道、
私は公園に寄り1人ブランコに揺られていた。
家に帰りたくなかった。
お母さんや姉ちゃんに妊娠の事実を告げるのが
怖かった。
まだ20才のすねかじり娘が妊娠したと知ったら、
どんな顔をするだろう……。
そして裕は……?
それでも家に帰らないわけにはいかない。
何時間も帰って来なければ、
心配して学校に電話するかもしれない。
けど、心の準備……
家族に告げる前に、裕へは知らせておこうと思い、
先に裕の家へ向かった。
(裕は親戚の弔事で一時帰国中)