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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第6章 体調不良、それは ――

  
 腕時計で時間を気にしながら、裕の家
 までの道のりを急いで自転車を走らせる。
  
 弔事が落ち着くまで連絡は控えてくれと、
 言われていたので気持ちが逸っていた。
  
 ペダルを踏み込む足にも無意識に力が入る。
  
 いつもはメールくらい入れてから行くのだが、
 今日は突然行って驚かせてみたかった。
  
  
 (喜んでくれるとええけど……)
  
  
 自分の顔を見て驚き喜ぶ裕の表情を想像し、
 絢音は思わず笑みを浮かべていた。
  
 横丁に入れば裕の家はすぐそこ ――。
  
 部屋の明かりが点いているのを見てホッとする。
  
  
 急いで玄関脇に自転車を停め。
  
 そうして軽やかな足取りで玄関へ向かった。
  
 ドアに鍵はかけられていなかった。
  
 その瞬間、何故か分からないが酷い違和感を
 絢音は感じた。
  
 嫌な胸騒ぎもする。

  
 …… ゆっくり離れの玄関ドアを開けた。

 そうして玄関の上がり框に綺麗に並べられた
 何となく見覚えのある女物のブーツを目にし、
 絢音は少し眉をひそめた。
  
  
 (誰か、友達でも来てるのかな……)
  

 けど、さっきからずっと止まらへん、
 この胸騒ぎは何なんやろ……。
  
 ドックン ドックン ―― と、
 さっきまでの弾んだ鼓動とは全く別の、
 嫌な動悸が絢音を支配しつつあった。
  
 音をたてないようにパンプスを脱ぐ。
  
 そうっと居室の中にあがったその時、
 か細い女の声が飛び込んできた。
  
 それが寝室から聞こえているものだと気付いた
 瞬間、ますます絢音の動悸は激しくなった。
  
 震える手で寝室のドアノブへ手をかけた。
  
  
「あ……んふ……いぃ……」


 その時にはもう、
 女の喘ぐ声がはっきりと絢音の耳に届いていた。
  
 意を決し、一気にドアを開け放つ!

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