オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第6章 体調不良、それは ――
私はどっと疲れを覚えその場にしゃがみ込んだ。
知らず知らず、大きなため息が漏れる。
考えなくてはならない事が重過ぎて、
いっそ全て投げ出してしまいたいような気持ちに
駆られる。
裕と過ごした月日は短いけれど、
彼と一緒に過ごした日々の出来事が
走馬灯のように脳裏を過ぎっていく ――。
小さかった頃の裕は絢音以上の恥ずかしがり屋で
いっつも兄・隆の後ろに隠れていた。
そんな裕との距離が急速に縮まったのは、
やはり同じ高校に進学してからで。
私はまるで気付いていなかったが、
クラスでは”いずれくっつくカップル”の
筆頭に挙げられていたらしい。
だけど、せっかく仲良くなれたのに、
もうすぐ裕がハワイに行ってしまうと分かった時は
本当に辛かった。
だから、野球部の引退試合のあと告白された時は
凄く嬉しくて、ごく自然に身体を委ねる事が出来た。