オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第8章 風雲、急を告げる
途中、先生や他の生徒に見られなかったのは
幸いだったが……
「くそ ――っ。なんでココの先生までいないんだよ」
保健室の養護教諭も下校した後だった。
「あつし ――っ! ヤバいよ」
額にびっしょり脂汗を浮かべ、苦悶の表情でベッドに
横たわる絢音。
傍らにはまりえも理玖も付き添っている。
絢音は激しい腹部の痛みに耐えながら強がりを言う。
「こ、これくらい、へっちゃらだよ。
何って事ない……」
一刻の猶予もない事は誰の目から見ても明らかで。
あつしは苦渋の決断を下す。
「智之先生呼んでくる」
*** ***
**分後 ――。
ただならぬ様子のあつしに促されるまま、
学校へ連れて来られた医師・日向 智之は
この場を見てすぐに大体の状況を悟り、
早速絢音の診察にとりかかった。
腹部の触診で絢音は軽く触れられただけで
”うっ”と呻いて、顔を歪めた。
「こいつぁ……」
「センセ、わたし、どうなっちゃうの……」
「何も心配はいらない、すぐ楽にしてやるからな」
絢音にとりあえずの痛み止めを注射しつつ、
あつしらに指示を飛ばす。
「あつしっ。救急通報は??」
「もうした」
「外で待機して、到着次第ここへ誘導してくれ」
「わかった」