オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第8章 風雲、急を告げる
夕方過ぎ、姉ちゃんが来てくれた。
「えっと ―― 調子はどう」
「うん。悪くないよ」
「よかった……飲み物とかゼリーとかコンビニで
色々買って来たんだ。もし良かったら食べてね」
そう言って姉ちゃんは片隅の冷蔵庫にしまう。
「ごめんね。姉ちゃんにもとんだ迷惑かけて
しまって……」
「ごめんなさいはもういっぱいしたでしょ? だから
もういい。これから先は元気になる事だけを考えて」
そんな姉ちゃんの優しい言葉に絢音は
「ありがとう」と声を震わせた。
絢音は窓の外を見た。
「ほんと私って酷い女……我儘で自分勝手で……
こうなったのは自業自得だったわ」
「あやね……」
その時カーテンがそっと開いた。
2人はそちらを見る。
「あ、あつし……あなたがどうして?? ―― つっ」
起きあがろうとして絢音は顔を歪めた。
「起きちゃだめだ。じっとしていて。
智之先生さんが連絡してくれたんだ。
意識が戻ったって」
「……」
「ほんとはコレ、小母さんに渡したらすぐ帰ろうと
思ってたんだけど。直接渡してくれって言われて」
あつしの手にももコンビニの袋があり、
色々買い込んで来たようだ。
「お母さんってば……」
絢音はほんの少し顔を赤くして目線をそらす。
初音はそのまま2人を置いて、
そっとその場を後にした。