
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第11章 餌に釣られて焼き肉デート
「―― ご満足頂けましたかな?」
「えぇ、もちろん。すっごく美味かったです」
「それはよかった」
ダサみは店員さんを呼んだ。
「ご馳走様、美味しかったよ。会計はこれで」
店員に手渡すカードに私は目が釘付けに!
……ブラックカード?
しかも、アメックスのやつ。
コイツ……マジ、何者なんやろ?
私の中で『危険人物』メーターがぐぐ、
ぐーんと上がった。
「どうした?」
「へ? ―― あ、ご馳走様でした」
一応、私は頭を下げた。一応ね。
「いいえ、お粗末さまでした。約束通り
お宅まで送るよ、近くの駐車場に ――」
ダメだ! アパートを知られてはいけない!
「い、いえ。ご心配には及びません。まだ、電車あるし
歩いても帰れます」
ダサみは言葉を遮って断る私を訝しげに見た。
「いや、送るよ。早く帰らなきゃいけないんだろ?
首都高使えば……」
「電車で大丈夫。今日はありがとうございました」
頭を下げて、ダサみが何か言おうとしているのを
聞かずに店を出て、足早に駅へと向かう。
