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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第13章 湘南台の悪魔

 
「―― ちょっと、ちょっと絢音ぁ。
 星蘭大の推薦入学辞退したんだって?
 せっかく苦労して勉強したのにぃ!」


 帰り支度して自販機コーナーにいる私に、
 利沙が話しかけてきた。


「うん、さっきお断りしてきた」


 私の言葉に利沙は笑った。


「このご時世、大学の方から”是非”って招致される
 なんてチャンスそうザラにはないよ。大学、
 行かないの?」

「うん。私さ……今度の事でひとつ悟ったような気が
 する」

「悟っ、た?」

「誰も人生、一寸先は闇なのよ」

「はぁっ?? あんたってば、またワケ分かんないこと
 言ってぇ……」
 
「お母さんと姉ちゃんにはまだまだ迷惑かけるし、
 脛も噛じらせて貰う。その間に自分が本当に
 やりたい事みつけるつもり」
 
 
 缶コーヒーを飲みながら、おやつ代わりの
 菓子パンをパクつく。


「センセが、勿体無いって嘆いてた」

「そう?」  

「朝も早よからサ店で働いて、週末はカテキョ、
 自分の勉強する時間なんてないだろうに学校いちの
 才女。なのに卒業後はプーって……」

「試験なんて授業を真面目に受ければ、意外と点数は
 取れるもんよ?」


 私は利沙にニヤリと笑う。


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