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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第14章 ずっと就職しないつもりじゃないけれど


「穴場中の穴場」

「たまには、こういう所もいいもんだな」

「でしょ~?」


 少し気分が浮上して話していると、カウンターに
 アツアツのかき揚げ丼が2つドンっと置かれた。


「はい、お待ちぃ、あ、絢音ちゃんあんたって学校の
 成績一番なんだってぇ? 珠ちゃん喜んでたわよ~」


 店主のおばちゃんが笑う。


「珠姫さんが?」

「昨夜ここで一緒に飲んだのよ。勿体無いから実家では
 雇わないってお姉さんは言ってるって? それにゃ
 あたしも同意見だ。若いうちはどんどん新しい物事に
 触れて、見識を深めるべきさ」

「……」


 気分がまた深く落ち込んでしまった。

 私はおばちゃんの言葉に何も答えずに、
 丼を食べ始め、各務先生も食べ始めた。

 2人とも無言で食べ終わった。


「おばちゃん、2人分置いとくね」


 立ち上がり、カウンターに金を置いて
 さっさと店に出る私の後ろから各務先生が
 声をかけた。


「払うよ」

「いいよ、この前のお返し。そっち曲がれば流しの
 タクシー拾えるよ。じゃ」


 何か言いたげだった彼を無視して反対方向へと
 歩き始めた。

 本当はこっち方がずっと交通量も多いのだが、
 これ以上誰とも話したくなかった。

 話す気分になれなかった。

 まだ、する気はなかった、『就職活動』

 そんな言葉で気分が沈む。

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